SPIDER Special Interview
全録は、新しい発見の連続~これこそが放送のあるべき姿

■ 「放送」のあるべき姿

――放送のあるべき姿とは、どういうことでしょう?

 放送の番組というのは1回放送すると消えちゃうわけです。お宝的シーンも含めて。
 今の放送は、たまたま番組を見ていた一部の人の目にしか触れることなく、見ていない人の目にはまったく触れることがなく消えていってしまいます。
 それって、いい番組をつくる上での費用対効果で考えると、この上なくもったいない気がしています。膨大な投資に対して、あまりにそれが活用されていない。
 そうやって考えると、このSPIDERのような「全録」型の機械が国民全体に普及するようになって初めて、放送のすべてにアクセスして、おもしろい番組をいろいろ引っぱってくるという、「多チャンネル放送」の考え方や醍醐味も本当に生きてくるんじゃないかと思います。

――放送波で流したものは、1週間以内ならいつでも手元にあって、自分の好みの番組やCMを好きなときに引っぱってこれるので無駄にならない、ということですね。

 SPIDERは、放送のいろいろな部分を「変革」するメディア機器だと思っています。放送権とも言われる、「テレビの編成」の部分にも大きな影響を与えます。
 ただ、これはテレビ局が今の編成を崩さなければならない、ということではなくて、SPIDERユーザーを意識した新しい編成ができるということだと思っています。
 例えば番組やCM間でのクロスリファレンス、つまり1つの番組で紹介している情報に対して、より詳しく紹介している他の番組へ飛ばすとかですね。

――面白いですね。今のSPIDERだと、それをユーザー側で「検索」しなければなりませんからね。

 ええ。「検索」をして見るのは楽しいですが、今後、放送側もそれを意識してくれれば、新しい重層的なエンターテイメントといったものが可能になってくるんじゃないかと思っています。
 そうなってくると、「放送」に対するイメージも随分変わって、仮に1つ1つの番組がつまらなくても、トータルでみると、こんなにおもしろいことがいろいろあった、という印象がもっと広がると思うんですよね。
 だから、私はSPIDERの登場は放送業界にとっても良いことだと思っています。
 今、放送業界は地盤沈下状態で、ネットに食われているだとか、いろいろ言われていますが、それは当たり前で「見られる環境」をつくっていないからなんですよ。
 今の放送は「その時間、その人しか見られない」環境だけで競争をしています。
 そうでなくて、平等に見られる環境を用意すれば、番組を後から見る人もどんどん増えていくわけだし、放送の魅力を感じてくれる人ももっと増えてくると思っています。
 そういう意味では、私はこうした全録レコーダーの出現というのは、放送業界にとってもインパクトがあることだし、ユーザー1人1人にとっても、自分の趣味の範囲を広げてくれるという意味でインパクトが大きいと思っています。

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