SPIDER Special Interview
SPIDERが映像ルネッサンスの幕を開く

■ 検索で始まるテレビ視聴

――ところで普段はどのようにしてSPIDERをお使いなんですか?

 ほとんどの場合「検索」メニューが入り口になっていますね。それほどテレビの前でじっとしている方ではないので、番組表を使うことは滅多にありません。
 「検索」を使って番組を見ていくのがおもしろいんです。
 ただ、おもしろいだけに、注文もたくさんあります。もっと細かい条件で検索をしたいし、いずれは「何日か前に記事で見かけた」といったうろ覚えの条件でも検索できるようにして欲しいです。
 今でもキーワードで検索ができる機能はありますが、自分が設定した(意図した)キーワードだけでは「セレンディピティ(思いがけない出会い)」が生まれません。
 私は本屋にいるのが大好きで1時間でもいられる方ですが、それは本屋の中を歩き回って、何が平積みされているかなどその場の出会いを楽しむ「セレンディピティ」が楽しいからです。同じようなことがSPIDERとテレビ番組でももっとできるといいのですが。

――そこは今後、コンシューマー用の機能として充実させていく予定の機能の1つです。例えばスクリーンセーバーを通して、いろいろな番組やCMをランダムに見せるなどしています。

 自分ではやりませんが、SPIDERでもう1つ面白いのは、自分の好みの番組を集めてこようと思えば、いくらでも集めてこられてしまうことですね。例えば「(明石家)さんま」しか出てこないテレビにしてしまうこともできてしまいます。
 実はこれって番組の編成する権利を、ユーザーの側に渡してしまう、ということで、テレビ業界の本質に挑戦しちゃうことじゃないでしょうか。

――そのことをどう思われますか?

 テレビ業界にしがらみのある大手メーカーには、まずこういう機械はつくれませんね。そういう意味でもSPIDERはおもしろいです。  では、これがテレビ局にとって悪いかというと、実はそんなことはない。SPIDERがあることでテレビを見る行為が楽しくなるわけですから、テレビの存在感を増すことができる。

――今、テレビを取り巻く状況は大きく変わりつつありますよね。

 同じような自由な編成の組み替えは、インターネット上の動画コンテンツだと、簡単にできてしまいます。
 昔はCNNだってベンチャーで、個人が勝手にビデオカメラを持ってニュースをつくっていたわけで、今ならインターネットでそれと同じことがもっとすごい品質でできてしまう。それもテレビ局のような規制を受けずにつくっているので、内容的にも品質的にもテレビ局を上回ってしまう可能性だってあります。
 そうしたユーザーがつくったコンテンツが、ある時点でCNNを超えてしまうかもしれない。
 それに、これからインターネットの時代が加速すると、今日のテレビの番組なんて、すべての映像コンテンツの100分の1、1000分の1あるいは1万分の1ほどになってしまうかもしれません。
 そう考えると、今はまさにルネッサンスの時代です。
 その中で、SPIDERは、ある部分を開放したけれど、そこだけの革命にとどめておくのはもったいないですね。
 これは大きな変化の最初の一歩なんだと思います。

――では、SPIDERは将来、どんな形になっていくのが理想だと思いますか?

 ハードディスクなどのストレージは年々容量の大きなものが出てくるので、ユーザーももっと大容量のものが欲しくなります。ただ、そこで勝負していると、家電メーカーと同じ土俵で戦うことになってしまいますよね。
 やはり、究極の形は、ユーザーの視聴データも、番組の記録もサーバー側で行ってしまうことでしょう。
 私はSPIDERが提供している価値というのは、この<番組を自由自在に操れるという「エクスペリエンス(体験)」>であって、機器ではないと思っています。
 だから地上波放送だけじゃなくって、IPTVも、インターネット上の動画コンテンツでもなんでも扱った方がいい。
 PTPには、ぜひ、そのエクスペリエンスのところで顧客を捕まえて、ネットの世界を乗っ取ってしまうくらいして欲しいですね。

[聞き手:有吉昌康(PTP)/文・構成:林 信行/写真:庄司直人]

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