


「全録」を早くから提唱していた、デジタルメディア評論家、麻倉怜士氏にSPIDERが放送にもたらす影響や可能性について話を聞いた。
■ AV文化とIT分化の融合
―― 麻倉さんと言えば、ハイビジョンの伝道師というイメージがありますが、早くから「全録」という、もう1つのテレビの方向性を提唱してらっしゃいますよね。
そうですね、私はこれからレコーダーというのは、2つの方向があると思っています。1つはハイクオリティ化で、私がよく観るハイビジョン番組が中心です。一方、もう1つの方向として、情報化があると考えていて、その方向では、私はSPIDERはCMのチェックに便利に使っています。それから私は石田ゆり子さんが好きなので、彼女の出ている番組を検索するといった使い方をしています(笑)。
―― SPIDERを使われてみて、どんな印象をお持ちになりましたか?
SPIDERでなんといっても革命的なのは、自分でターゲティングしなくても、後からゆっくり自分のみたい番組を探せるということでしょう。
私は、AV文化というのはリアルタイムの文化、つまり、「(放送が流れている)その時が旬だぞ」という文化で、ITの文化は「ゆっくりやりましょう」という時間差文化、つまり「その時じゃないときにやる文化」だと思っているんです。
この2つの文化はぜんぜんディメンジョン(次元)が違うんだけれど、いずれは1つになるんじゃないかと信じています。
SPIDERは、そのAV文化とIT文化がすごくいい感じでミックスしていますね。先取りですね。
―― なるほど、AV文化とIT文化ですか。おもしろいですね。
AV文化というもののベースには、「放送」があります。AVにとっては「放送」が最大の根幹なんですよ。
「放送」がどっちの方向に動いているかによってすべての方向性が決まっていきます。例えば放送がハイビジョンになると、それにあわせて家庭用ビデオカメラなどもすべてハイビジョンになっていくのです。
SPIDERは、そのAV文化の中に、うまくITの時間差文化を持ち込んだところがおもしろいと思います。