SPIDER Special Interview
全録は、新しい発見の連続~これこそが放送のあるべき姿

■ 全録にいたる長い道のり

――麻倉さんは、ビデオ機器に入れ込まれるはるか以前、FMラジオとオープンリールの時代からエアチェックをされているということですが。

 そうですね。昔はビデオ録画はすごく大変でした。「1時15分30秒から何時間録画」とか設定していました。その後、新聞のテレビ欄に印刷した8桁か9桁の番号を使うようになったけれど、これも大変で……。
 それが、その後、EPG(電子番組表)というものが出てきて録画は劇的に簡単になりました。
 ただ、録画は簡単になったけれど、これはまだ基本的にターゲティングの録画であって本質的には変わっていません。

――ターゲティングというと?

 自分が観たいものに対して、ある「意識」を持って録画する、ということです。
 ターゲティングする対象は、自分が従来持っていた体験の延長だったり、好きな分野だったりです。
 ようするに、「興味録」なのです。
 その後、ハードディスクレコーダーがでてきて録画できる時間がおおきく増えましたが、これでもあまり本質的な変化はなく、結局、自分の知っている番組しか録画できませんでした。


――なるほど、それが「全録」で変わるのですね。

 いいえ、実は自分の「意識」を飛び越えて録画してくれるという部分は「全録」以前に、「おまかせ録画」という機能で実現していました。
 つまり自分が好きなそうな番組に当たりをつけて勝手に録画する製品が出てきたときでした。ソニーのいまはなき「コクーン」が有名ですね。
 これだと、それまでの予約録画のような一本釣りではなくて、自分が興味を持つ範囲で、想定していなかった番組も録画してくれます。
 半分くらいは雑魚(ざこ)だけれど、3分の1くらいは本当にいい番組がひっかかっています。

――そうでした。おまかせ録画は確かに、自分の知らなかった番組を発見させてくれますね。

 ええ。ただ、世の中には興味はあるけれど、そうとは気づいていない事柄もあって、おまかせ録画でも、それに対してはアクセスする術はまったくありませんでした。
 実はそれを可能にするものこそSPIDERがやっている「全録」だと思います。
 SPIDERの前に「VAIO type X」などいくつか他にも全録の機械がありましたが、これらはハード屋さんの発想でつくられていて、ただ番組を全部録るだけのことをセールスポイントにしていました。チューナーが何個で、ハードディスクが何TBとか、そういったことだけを売りにしていたのです。
 でも、実はそんなことは全録をするには当たり前の前提条件に過ぎなくて、本当に大事なのは、そこから「どうやって見たい番組を見るのか」。マイ編成つまり自分だけの編成をつくり出すのかが重要であって、そういう意味では、「全録」という文化が本当に完成されたのはSPIDERからだと言えるでしょうね。

――「全録」を始めると、それまでの「部分録」、「興味録」と何が違ってくるのでしょう?

 「全録」が素晴らしいのは、自分の守備範囲の情報に対して「dig」、つまり深堀りができる一方で、それまで自分が知らなかった新しい物事に対しても発見があり、興味が次々に湧いてくることです。「全録」を始めると、こんな番組があったのか、こんな切り口があったのか、こんな人がいたのか、といった発見の連続なんですよね。
 そして私はこれこそが本来の「放送」のあるべき姿だと思っているんです。

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